八海山・登山記 1998.10.10~11

久保政次郎…「愛の登山日記」

10月10~11日、1泊2日で八海山に登山に行きました。

関越自動車道を六日町で降りて、山口から登山です。青梅から3時間でつきます。8時から登山開始。3時間ほど登ったところで、雲行きが怪しくなってきました。私は勘が非常に良い。昼食が終わったとたんに、天気は急変して、あっという間の大雨です。合羽を着る間もなく、冷雨が豪雨のごとく降り始めました。氷雨は私達の体温を否応もなく、冷やして手がかじかんできました。しかし、すぐ登山開始です。ところが、その場所から急に鎖場の連続です。大日岳ふもとから、山小屋まで1時間半です。山小屋に2時ごろつく予定です。

早く着きすぎると思い、雨の中を五竜岳まで縦走することにしました。女房は雨がひどいので、嫌だと言いましたが、時間があるので決行しました。実のところ、横殴りの強い風で、尾根から吹き飛ばされそうで恐かったです。五竜岳から千本桧小屋に到着した時は、3時近くでした。ついた時に、雨が止むと言う運のよさです。全身ずぶぬれになり、ザックの中までびっしょりになってしまいました。今後登山をする人は雨対策のことを十分に考えたほうが良いと実感したほどです。八海山の尾根の縦走は、雨の日は非常に危険です。皆さんが縦走する時は、良い天気の日にして下さい。私達もこの日はトラバースしたのです。

千本桧小屋のことですが、到着した時は、近代的な小屋のように見えました。中に入った時は、自家発電の設備もランプもなく、ストーブもなく、暗く寒い寂しいところでした。夕食も、暗闇の中で食事したのです。40人ほど登山客が食事しましたが、各自がヘッドランプでぼそぼそと話しながら、更に寒さに震えながら、ろくなおかずもなく食事しました。ビールを注文したら、既に売り切れ。お酒を注文したら、奥さんが私の分を分けてあげますと言って、ワンカップ酒を1本だけ700円で売ってくれました。寂しくちびちび飲んだだけでした。寝る時です、1枚の布団に2人で寝たのです。

寒さに震えながら、せんべい布団の中で朝まで寝ることにしました。女房が小さな声で 「政次郎さん、今日は恐かったわ、でも、私頑張ってついていきます」と言って私の手を握ってきました。「これからも よろしくお願いします。」 はっとして女房の顔を見ると目に涙がにじんでいました。俺は女房の手を強く握り返して大きくうなずくと、大きな涙が頬を伝わっているのが見えました。「俺がついているいるから 、大丈夫だよ、いつでも俺が必ず守ってあげるから。」 と 言って彼女を引き寄せて強く抱きしめてあげました。そして×××?

10月11日

神様は私達を見放しませんでした。快晴のぴーかんです。雲一つない素晴らしい天気でした。八海山に来たので、八海山の尾根を縦走しなくて意味がありません。山の熟練者でなければ、この尾根の縦走は非常に危険です。山小屋のおやじさんにいわれました。私達は意を決して、縦走することにしました。気持ちよい天気です、左奥に生沼駒ヶ岳が見えます。女房が後ろで口ずさんでいます、

♪♪ 君について行こうどこまでもついて行こう

     苦しいときも 嬉しいときも

     生きる喜びを教えてくれた

     君について行こう ♪♪

私もお返しに歌を口ずさみます

♪♪ どこまでも行こう 道は険しくとも

     口笛を吹きながら 歩きつづけよう

     あの山の向こう ♪♪

ところがすぐ鎖場です。鎖場 、鎖場の連続です。

八海山は尾根づたいには30数箇所の鎖場があるそうです。登り始めから、足が震え足がすくむ尾根を鎖1本を便りに、死にもの狂いで登りました。安藤さんにお伝えしておきます。私達は根性で登りましたが、この山の縦走は決してお勧めできません。山の案内人がこの山が縦走できたら、日本のどこの山でも平気ですよと言っていました。そんな訳で、重ねて言いますが私達は縦走しましたが、安藤さんたちは縦走はしないほうが良いと思います。特に大日岳の尾根は死ぬ覚悟での鎖場があります。私達はこの尾根を縦走したことが、自慢したくもあり人に自慢して登ることを勧めたくありません。大日岳からの下山は非常に快適でした。妙義山に3度ほど登ったことがありますが、その比ではありません。

実は、女房にはハンデーがあります。13年ほど前に左手に怪我をして、使える指は3本しかないのです。妙義山に登山したときです、太い鎖のときは指を鎖の中に入れて登ったのです。そのハンデーを乗り越えて今日も この険しい八海山を登ったのです。険しい場所はいつもひっぱてあげるのですが、鎖場では確保がうまくできません。良くぞ頑張ったって、私は私の口から、女房を誉めてあげたいと思っています。みなさんが八海山を縦走したらきっとわかると思います。おいちゃん、こまっちゃん、小嶋さん、ぜひチャレンジしてみてください。紅葉は50パーセントでしたけれども、実に素晴らしい山だったと思います。最後に、この山の写真を送ります。

久保政次郎 記